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事業名

本殿後戸『奥参り』拝所設置事業

本殿後戸『奥参り』拝所設置新築事業のご報告

【ご報告】
昨日の令和8年6月30日(火)午前10時00分より
本殿後戸『奥参り』拝所設置新築工事 奉納奉告祭を執り行いました

この度、阿保神社では境内設備のさらなる充実、そして当社の貴重な歴史・文化を皆様に広く知っていただくための新たな試みとして、本殿の真後ろ(真裏)に新たなる拝所を新築いたしました。

令和8年6月30日、無事にそのお披露目と「奉納奉告祭」を執り行いましたことを、ここに謹んでご報告申し上げます。

御寄進者様のご紹介

本事業は、地元企業の株式会社竹内海苔様の尊いご寄進により実現いたしました。

阿保神社の歴史に新たな1ページを刻む大がかりな意向に深いご理解を寄せ、多大なるご支援を賜りましたことに、心より深く感謝申し上げます。

株式会社竹内海苔
創業者(故人):竹内弘昭 様
代表取締役:濱野純子 様

拝所設置に至る経緯

〜宮司の研究論文から始まった歴史の紐解き〜

ちょうど1年前の令和7年6月頃、株式会社竹内海苔の代表者である濱野様より「神社のために何か役立ててほしい」と、大変有り難いご寄進のお話をいただきました。

この尊いお申し出をきっかけに、私は宮司として「参拝者の皆様により深く当社の信仰と歴史に触れていただける方法はないか」と熟考した際、心に真っ先に浮かんだのが、本殿真裏にある「後戸(うしろど)」の存在でした。
その後に、濱野様にこの計画をご相談したところ、快くご承諾をいただくことができました。

実は、私が神職の資格を取得するために大阪国学院に通っていた2年間の集大成として執筆した研究論文のテーマこそが、この後戸に関するもの、「阿保神社本殿背面の戸に関する考察〜桟唐戸はなぜ設置されたのか〜」(注1)だったのです。

そして、当時私が書き上げた論文を読んでくださったことがきっかけで、日本の神社建築研究の第一人者である神戸大学名誉教授の黒田龍二先生(注2)が当社に強い興味を持ってくださり、わざわざ現地調査に足を運んでいただくという特別な御縁へと繋がりました。

その黒田先生の調査によって、当社の本殿が建築史において極めて貴重な「優作」であることが証明されたのですが、実は私の中でしばらく温めていた「この珍しい後戸を皆様に安全に拝していただける空間を作りたい」という願いは、濱野様からの尊いご寄進によってようやく日の目を見る形となったのです。

『奥参り』とは

「奥参り(おくまいり)」とは、神社の本殿の後ろ(真裏)へと回り、後方から神様にお参りすることを指す、古くからの特別な参拝方法です。

神社の正面(拝殿)からだけでは直接拝することのできない、神様のよりお近く、いわば「御神体の真後ろ」から祈りを捧げることで、より深い神気を感じ、特別な祈りのひとときを過ごしていただけます。

学術的にも極めて希少な阿保神社本殿と「後戸」の謎(ミステリ)

当社の本殿は、17世紀前期(江戸時代初期)に建設されたと推定される歴史ある建造物で、覆屋(おおいや)によって手厚く保護されているため、非常に良好な状態で古材が残されています。
黒田龍二先生の調査により、本殿には以下のような極めて珍しい特徴・学術的価値があることが判明しています。

1. 全国でも類を見ない、内陣に直接設けられた「背面扉(後戸)」

当社の本殿背面には、外開きの「両折桟唐戸」と呼ばれる扉が設けられています。

全国を見渡しても本殿の背面に扉がある事例は極めて少なく(国宝の吉備津神社や北野天満宮など数例のみ)、「一間社流造(いっけんしゃながれづくり)」の本殿において背面扉を持つ例は、黒田先生も「阿保神社以外に他には知らない」と仰るほど、類を見ない特異な事例です。

さらに、御上神社本殿の事例では神具の収納庫などに繋がっているのに対し、阿保神社では御神座がある「内陣(ないじん)」に直接扉が面している点が最大の驚きであり、これこそが阿保神社に伝わる「最大の謎(ミステリ)」として、今後の研究課題となっています。

2. 特異で華やかな組物「大斗拳鼻(仮称)」

屋根を支える重要な木組みである組物(くみもの)が非常に特殊な形状をしています。これはよく目立つ特徴的な意匠であり、この本殿の第一の特徴です。

黒田龍二先生による「阿保神社本殿覚書」
黒田先生が実際に現地調査を行われた際の、詳細な建築的考察が含まれた貴重な資料(PDF)を公開しております。ぜひあわせてご覧いただき、当社の深い歴史ロマンに触れてみてください。
↓↓↓
阿保神社本殿覚書(PDF)

施工会社様のご紹介

今回の拝所設置工事にあたり、その素晴らしい伝統技術を振るってくださったのは、有限会社 上杉社寺匠芸 様です。

上杉様には、もう数年前から「阿保親王社」や「厳島神社」の社殿改装をはじめ、令和6年の『花天井プロジェクト』なども手掛けていただいております。

伝統建築の粋を熟知し、当社の境内を誰よりも理解してくださっている、阿保神社にとって最も信頼できる大切な職人様です。今回もその確かな技術で見事な拝所を新築してくださいました。

宮司より皆様へ

宮司としての私の研究を土台として、
黒田先生による学術的なご指摘を枝葉として育ち、
そして…
株式会社竹内海苔様の創業者である故人竹内弘昭様、代表取締役濱野純子様との有り難い御縁の花を咲かせ、更にここから実を結ぼうとしています。

これら全ての奇跡が重なり、この度、長く歴史の謎を今に伝える「後戸」を皆様にお披露目し、直接お参りいただける環境が整いました。

新しく完成いたしました拝所により、
阿保神社の境内はより一層、神聖で魅力あふれる空間へと生まれ変わりました。

ご参拝の際は、正面での御参拝ののち、ぜひ本殿の裏手まで足をお運びください。

そして樹齢千年を超えるとされる御神木が聳えるこの所にて、
令和八年に新しく設けられた拝所にて、
阿保神社の歴史とロマン、
そして『奥参り』ならではの神様をより近くに感じる特別な祈りのひとときを体感していただければ幸いです。

皆様のご参拝を、心よりお待ち申し上げております。

 

 

 

 


注1、『阿保神社本殿背面の戸に関する考察〜桟唐戸はなぜ設置されたのか〜』の研究論文は、私が令和2年4月から令和4年4月まで神職の資格取得のために通っていた大阪国学院という通信教育課程の卒業に必要な研究論文です。
お蔭様でこの論文は最優秀賞をいただきました。

しかし、この論文の結論(第3の独自仮説)は、今はまた更に第4の仮説へと進化しており、この研究論文は、完全なる未完成の状況です。

今回の株式会社竹内海苔様の御寄進と、昨年の黒田龍二先生のご講演(マッキーアカデミー第一回)を契機に、再びこの研究を進めていきたいと思うようになりました。

この謎(ミステリ)は、かなりの難問ではありますが、私の宮司としての残りの人生では、いつか完成をさせていきたいとかんがえております。

その際には、すべての論文を公開させていただきます。

注2、黒田龍二先生は、神戸大学名誉教授にて、日本の建築史学者、専攻は日本建築史。
日本建築学会奨励賞や、文部科学大臣表彰等を受賞された。
元文化庁文化審議会文化財分科会第二専門調査会委員にて、数々の日本の神社建築を調査された経験をお持ちです。